札幌高等裁判所 平成7年(行コ)6号 判決 1995年9月13日
札幌市手稲区曙一一条二丁目二番二号
控訴人
大内継也
札幌市厚別区厚別東五条七丁目三番一号
被控訴人
札幌東税務署長 森本清
右指定代理人
土田昭彦
同
佐藤雅勝
同
木村俊道
同
池田敏雄
同
村松健文
同
柏樹正一
同
房田達也
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(一) 原判決を取り消す。
(二) 札幌南税務署長が控訴人に対し、平成四年一二月七日付けでした昭和六二年九月二一日相続開始に係る相続税の更正処分のうち、納付税額一六一一万一一〇〇円を超える部分を取り消す。
(三) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文と同旨
二 当事者の主張及び証拠関係
原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断する。その理由は原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。
(なお、控訴人が提出した控訴理由は必ずしも明確とはいえないが、<1>控訴人についてのみ生活の資として取得した財産(相続開始後に控訴人の債務と相殺された定期預金五六三万三一四八円に関するものと考えられる。)が相続による取得財産に加算され、他の相続人である大内小夜子においても二三七万六四三五円の財産を所得しているのに、相続による取得財産に加算されていない、<2>相続財産の固定資産税は大内小夜子が負担すべきである、<3>修正申告では相続債務六一二万七五一四円は大内小夜子に負担させているから、その額を大内小夜子の相続財産とすべきである、<4>控訴人と他の相続人との相続税の負担が不公平である、などと主張するようである。
しかし、<1>については、甲五号証によれば、相続財産である右定期預金は被相続人が死亡後に控訴人の債務の支払に当てられたものであることが認められるから、これを控訴人の取得財産と認めたのは相当であり、大内小夜子においても同様に二三七万六四三五円を生計の資本として贈与を受けたことを認めるに足りる証拠はない。<2>については、被相続人のした遺言の効力が発生することにより、高裁決定が説示するとおり相続不動産は当該相続人に帰属され、当該相続人は以後取得した不動産の公租公課を負担することは当然であるから、大内小夜子が負担すべき理由はない。<3>については、修正申告においては相続債務六一二万七五一四円は相続人である大内小夜子が負担することとなっていないことは明らかであるから、失当である。<4>については、主張自体明らかではないが、控訴人らが修正申告で申告した総相続財産額が四億三六〇〇万一四七七円、債務等の金額六一二万七五一四円、三年以内の贈与財産価額が八七九万七五六六円であり、これによると、総課税価格が四億三八六七万円となることは当事者間に争いがなく、また、右に対する各相続人の税額控除額を引き去る前の相続税総額が一億六九九六万七六〇〇円と算定されることは乙一号証から明らかである。相続税法一七条によれば、相続人の各相続税額は当該相続人が取得した財産の課税価格の総課税価格に占める割合によって算出されるから(なお、控訴人が取得した相続財産の価額及びその財産の価額から控除される債務等の額がないことは当事者間に争いがなく、その課税価格は四六六三万一〇〇〇円となる。)、相続財産の総課税価格が確定した以上、他の相続人の取得した相続財産の課税価格によって控訴人の相続税額は影響を受けないから、特段の事情がない限り、他の相続人の相続税額を理由として控訴人の相続税額を不当であると非難することはできないというべきである。そして、控訴人と他の相続人との税の負担が不公平であり、これによって、控訴人の相続税額が不当となる事情を認めるに足りる証拠も存在しない。)
二 よって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、民訴法三八四条、行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 清水悠爾 裁判官 安齋隆 裁判官 滝澤雄次)